【書評】ニュースに出る経済数字の本当の読み方

書籍

自民党の総裁が安倍さんだった時代に、「政府の施策によって日本の株価がこれだけ上がった!」とか、「雇用者がこれだけ増えました!」とか、当時ニュースが流れていましたよね。

確かに、資料を見ると株価が上がっている、失業率が下がってる…。ですが、

その経済資料が、どういう計算式がもとにしているか、もしくはどこと比較しているのかで、印象操作が可能なのです。

本書では、経済データの基本的な見方を紹介していて、私が面白いな~と思ったところを取り上げたいと思います。

アベノミクスで株が上がった?

安倍政権では、株価が上がったのは、アベノミクスの効果によるものだと説明していましたが、

実は、同時期に米国株も上がっていたのです。

本当にアベノミクスによる効果だったのでしょうか?

今の時代、経済のグローバル化が進んでいて、純粋に国内の経済施策だけで効果が出ることはありません。日本の景気の半分以上は海外事情で決まります。

実は、安倍政権が発足する前に米国の中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)が大胆な金融政策を行っていて、これによってばらまかれたマネーが米国株式市場に流入し、株価の上昇が始まっていたのです。

そうなってくると、相対的に日本の株が割安になって、外国人投資家が中心となって日本株への本格的な買いが入って、日本の株価が上昇した、というわけです。

ということで、

世界経済に目をつぶって政策効果を主張するのはミスリード(誤った解釈に誘導すること)を誘います。

安倍政権はある意味とてもラッキーな船出だったと言えますね。

有効求人倍率は0.8倍から1.6倍へと急改善した?

「有効求人倍率が大幅に改善しているじゃないですか!」

これも安倍さんがよく言っていたフレーズですね。

有効求人倍率とは「有効求人数÷有効求職者数」で計算されます。

つまり、有効求人倍率が上昇するには、有効求人数が増えたか、有効求職者数が減ったか、もしくはそのどちらもがあったかで上昇することとなります。

実は、この有効求人数の中にはパート、アルバイトなどの非正規雇用者も含まれます。

なので、正社員だけが有効求人数にカウントされているわけではないのです。

昨今は、パート、アルバイトでの募集が増えていていますよね。だから有効求人数が増えているのです。

付け加えて、このころの時期は団塊の世代が退職していく年代に差し掛かっています。

この年代になると、就職活動はせず、隠居生活に入るでしょう。だから求職者が減って有効求人倍率が上昇したのです。

このように、指標を見ているだけでは見えてこないものがあり、実際の数字がどのように増減しているのかを見ていくことも大事なのです。

GDPが増えたので景気は良くなっている?

景気動向を計る指標として、よく取り上げられるのがGDP。なんとなくGDPが上がっていれば景気が回復しているように感じます。

しかし、GDPの生みの親であるクズネック氏自身が、

「GDP統計は単に生産額を測るだけであり、福祉や豊かさの度合いは考慮できない」

と評しているのです。

GDPとは「 一定期間に国内で新しく生産された財やサービスなどの付加価値の総額」を指し、伸び率で景気を判断します。

しかし、このGDPには、新しく生産したものが在庫になった場合でも、GDPが増加することになります。

これは、生産したものが必ず消費されるという前提に立っているからです。

しかし、実際は本当は売るつもりで作ったけど、売れなかったから在庫になってしまった。というケースも考えられますよね。

そのような場合は、本当は不景気であると判断されるはずなのに、GDP上では増加しているので、GDPだけで景気を判断することはできないのです。

またさらに、輸入が増えるとGDPは減少します。

これは、「輸入が増加したということは、国内の需要は国内の企業だけでは賄えなかった→国内の生産力は相対的に弱い」とみなされるからです。

昔はどうだったかわかりませんが、今の時代の感覚とはズレていると思いませんか?

輸入しているからって一概に景気が悪いって言えるのでしょうか?

これが、GDPだけでは景気を判断することはできないゆえんです。

報道を鵜呑みにしないようにしよう!

私も本を読んでいろいろビックリしましたが、報道を鵜呑みにしないように気を付けないといけないな~と感じました。

いろいろな側面から情報をとって、考えて。自分なりの意見を持てるようにしたいですね!

参考文献:

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